卒業生が出版した新刊本の紹介

『平生釟三郎の栄光と苦悩』   45回生 松下豊久

この度、2024年3月31日付で甲南大学出版会より、拙著『平生釟三郎の栄光と苦悩』を上梓させていただくことになりましたので紹介させていただきます。

 平生先生は、甲南学園や甲南病院の創立者であり、東京海上火災の専務、川崎造船所社長、日本製鐵会長・社長を務め、更には広田弘毅内閣の文部大臣を務めた一流の政財界人です。

それだけでなく、昭和初期には、世界のブロック経済圏構築と軍備拡大に反対して、「自由通商協会」や「大阪軍縮促進会」を結成し、また、満州移民よりもブラジル移民を奨励するために、海外移住組合連合会会頭や訪伯経済使節団団長に就任して、ブラジル移住者支援活動を推進しました。

そして日華事変後には、日本陸軍の占領地である北支那最高経済顧問に就任して、中国民衆の生活改善を最優先とする経済政策を推進して親日政権への信頼獲得に尽力するとともに、日米戦争を回避するために、北支那のインフラ整備に巨額の米国資本を導入しようという努力をし、阿倍信行内閣に対しては、英国を仲介者とする蒋介石中国国民党政権との和平交渉を進めるよう進言をしています。

日米開戦後は、鉄鋼統制会会長などに就任して、戦争の必勝を願って産業面から国策を支える任務に就きますが、それでも大日本産業報国会では、厚生大臣の反対を押し切って無産政党出身者を幹部に登用して労働者福祉に心を砕きました。

このように、平生先生は、戦前昭和という困難な時代と真摯に向き合って、政財界のリーダーの立場で苦闘されて壮絶な人生を送られた求道者であり、とてつもない大きなスケールの凄い人、という観点で本書を書きました。甲南小学校の設立経緯と初期の甲南小学校の教育にも触れておりますので、拙著を読んでいただけたら嬉しく思います。