『同窓生便り』第15号 61回生 清原 由季「アート活動の原点」

61回生の清原由季です。
私は幼い頃より絵を描く事が好きでしたが、小学校1〜3年生で担任をして頂いた黒田明子先生に「普通は立ったり座ったりという姿を作るけど清原さんは違う」と、寝転がって戯れている子熊の粘土細工を褒めて頂いたのが美術に興味を持つようになった一因のように思います。書道の授業で故冨田重明先生から「きれいに小さく書くのではなく、はみ出すくらい元気に書きなさい」と教わった事も心に刻まれています。

中高時代は美術部に所属していましたが美大を受験する事も無く、甲南女子大学英文科に進学しました。しかし、ファッションが大好きだった事もあり、同時に神戸ドレスメーカー学院(現神戸ファッション専門学校)に4年間フレックス生として通い、オートクチュール科を卒業させて頂きました。

大学卒業後は伊藤忠商事に勤務、結婚退職後は専業主婦として過ごしていましたが、唯一の制作活動であった年賀状が日本郵便の年賀状大賞で入選した事をきっかけに、刺繍を取り入れた作品を作るようになりました。私は刺繍を表現方法の一つに用いていますが、従来の手芸のように整った糸目の美しさを表現するものとは異なり、油絵に於いて筆のタッチが画家の息づかいをも表現するように、心情やエネルギー、時間の流れをも手を使って糸を縫い込み、皮革・紙・セラミック・ペイント等あらゆる素材を組み合わせて表現しています。

2015年より神戸や東京で個展により作品を発表していますが、神戸のギャラリー301にて具体美術協会(芦屋発祥の芸術集団。近年欧米で再評価が高まっている)のメンバーでいらした故堀尾貞治氏とのコラボ制作展示は堀尾さん曰く「伝説の展示」との事で大変思い出深いものとなりました。堀尾さんと親交が深く具体アートの再評価の立役者ともなられた故河崎晃一先生(小学校で図工を教わりました)に個展をご覧頂かなかった事は残念でなりません。

2017年より、セザンヌ・ピカソ・モディリアーニ・レオナール藤田等々名だたる画家が参加した事でも知られるパリ、サロンドートンヌ展に公式入選を重ね、本年度も4度目の入選を果たす事ができました。コロナ禍の現状ではありますが、シャンゼリゼ通りの特設会場で開催される事を心より望みます。今後も人々の心に残るような作品を創り続けて行きたいと思います。

61回生 清原由季

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2017年サロンドートンヌ初入選

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2019年国立新美術館 日本・パリ現代美術展 優秀賞作品

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個展にて黒田明子先生ご夫妻と。